注文住宅の予算を「なんとなく」で決めてしまうと、住宅ローンの返済に追われて生活が苦しくなるリスクがあります。特に20代〜30代は、子どもの教育費や車の維持費など、住宅以外にもお金がかかるライフイベントが控えています。
この記事では、年収別の無理のない予算シミュレーションと、FP(ファイナンシャルプランナー)が推奨する予算の組み方を解説。「自己資金はいくら必要?」「月々の返済額の目安は?」といった疑問にも答えます。
予算を決める3ステップ
月々の返済可能額を計算する
手取り収入の25%以内が安全ライン。ボーナス返済は使わないのが原則。
借入可能額を逆算する
月々返済額 → 借入総額 → 自己資金を足して「買える家の総額」を算出。
総額を「本体+付帯+諸費用+予備費」に配分する
本体工事費70% / 付帯工事費17% / 諸費用7% / 予備費6%が目安。
ステップ1:月々の返済可能額を計算する
「借りられる額」と「返せる額」は違う
銀行の審査では年収の7〜8倍まで借りられるケースがありますが、実際に無理なく返済できるのは年収の5〜6倍です。
| 借りられる額 | 返せる額(推奨) | |
|---|---|---|
| 計算方法 | 年収 × 7〜8倍 | 年収 × 5〜6倍 |
| 返済負担率 | 30〜35% | 20〜25% |
| 年収500万円の場合 | 3,500〜4,000万円 | 2,500〜3,000万円 |
| 月々返済額 | 10.7〜12.2万円 | 7.7〜9.2万円 |
| リスク | 生活が苦しくなる可能性大 | 教育費・老後資金も確保可能 |
返済負担率25%を超えると危険
返済負担率(年間返済額÷年収)が25%を超えると、予期せぬ出費(病気、転職、教育費増加)に対応しにくくなります。住宅金融支援機構の調査でも、返済負担率25%以上の世帯で「返済が苦しい」と感じる割合が急増しています。
手取り収入の25%以内に抑える計算方法
月々の返済可能額の計算は非常にシンプルです。
手取り月収 × 25% = 月々の返済可能額
- 手取り月収25万円(年収400万円程度)→ 返済可能額 6.25万円
- 手取り月収30万円(年収500万円程度)→ 返済可能額 7.5万円
- 手取り月収35万円(年収600万円程度)→ 返済可能額 8.75万円
- 手取り月収40万円(年収700万円程度)→ 返済可能額 10万円
ステップ2:借入可能額を逆算する
年収別の予算シミュレーション
金利1.5%、35年返済の条件で、年収ごとの予算をシミュレーションします。
| 年収 | 手取り月収 | 月々返済額(25%) | 借入可能額 | 自己資金300万円の場合の総予算 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 20万円 | 5.0万円 | 1,640万円 | 1,940万円 |
| 400万円 | 25万円 | 6.25万円 | 2,050万円 | 2,350万円 |
| 500万円 | 30万円 | 7.5万円 | 2,460万円 | 2,760万円 |
| 600万円 | 35万円 | 8.75万円 | 2,870万円 | 3,170万円 |
| 700万円 | 40万円 | 10.0万円 | 3,280万円 | 3,580万円 |
| 800万円 | 45万円 | 11.25万円 | 3,690万円 | 3,990万円 |
上記は金利1.5%・元利均等返済・35年返済の場合の概算です。実際の借入可能額は金融機関の審査基準や他の借入状況(車のローン等)により変動します。
共働き夫婦の場合の計算方法
共働き夫婦の場合、世帯年収で計算できますが、「片方が仕事を辞めても返済できる額」で計画するのが安全です。
例:夫年収500万円、妻年収300万円の世帯
- 世帯年収ベースの借入可能額:3,280万円
- 安全な借入額(夫の年収のみで計算):2,460万円
ペアローンを組む場合でも、一方の返済額が手取りの25%を超えないようにしましょう。産休・育休中の収入減少も考慮が必要です。
ステップ3:総額を費用項目に配分する
予算3,000万円の配分例
| 費用項目 | 割合 | 金額 |
|---|---|---|
| 本体工事費 | 68% | 2,040万円 |
| 付帯工事費 | 17% | 510万円 |
| 諸費用 | 7% | 210万円 |
| 予備費 | 8% | 240万円 |
| 合計 | 100% | 3,000万円 |
本体工事費2,040万円を坪単価60万円で割ると、延床面積34坪(約112㎡)の家が建てられます。4LDKの標準的な間取りが実現可能です。
予算2,500万円の配分例
| 費用項目 | 金額 |
|---|---|
| 本体工事費 | 1,700万円 |
| 付帯工事費 | 425万円 |
| 諸費用 | 175万円 |
| 予備費 | 200万円 |
坪単価55万円のローコストメーカーなら延床面積31坪(約102㎡)。3LDK〜4LDKが可能です。
自己資金(頭金)はいくら必要?
頭金ゼロでも家は建てられる
現在はフルローン(頭金ゼロ)でも住宅ローンは組めます。ただし、頭金を入れるメリットは大きいです。
| 頭金ゼロ | 頭金300万円 | 頭金500万円 | |
|---|---|---|---|
| 借入額(総額3,000万円) | 3,000万円 | 2,700万円 | 2,500万円 |
| 月々返済額(35年・1.5%) | 9.2万円 | 8.3万円 | 7.7万円 |
| 総返済額 | 3,858万円 | 3,472万円 | 3,215万円 |
| 利息の差(ゼロ比) | — | −386万円 | −643万円 |
頭金300万円を入れるだけで、35年間の利息が約386万円減少。月々の返済も約9,000円楽になります。
頭金の目安
- 理想:物件価格の10〜20%(3,000万円の家なら300〜600万円)
- 最低限:諸費用分(150〜300万円)を現金で用意できると安心
- 頭金ゼロの場合:金利優遇が受けられない場合があるため注意
自己資金を貯めるべきか、すぐ建てるべきか
「もう少し頭金を貯めてから」と考える方も多いですが、住宅ローンの金利と家賃の兼ね合いで判断しましょう。
- 現在の家賃が月10万円 → 年間120万円の「捨て金」
- 3年間貯金して300万円の頭金を作る → その間の家賃360万円が消える
- 頭金300万円による利息削減効果は約386万円 → ほぼトントン
住宅ローンの金利が低い今は、早めに建てて家賃の流出を止めるのも合理的な選択です。ただし、最低限の生活防衛資金(生活費3〜6ヶ月分)は手元に残すことが絶対条件です。
住宅ローンの基礎知識
金利タイプの選び方
| 変動金利 | 固定金利(フラット35等) | 固定期間選択型 | |
|---|---|---|---|
| 金利(目安) | 0.3〜0.7% | 1.5〜2.0% | 0.8〜1.5%(10年固定) |
| メリット | 金利が最も低い | 返済額が確定、将来設計しやすい | 一定期間は金利が低い |
| デメリット | 金利上昇リスクあり | 変動より金利が高い | 固定期間終了後に金利変動 |
| 向いている人 | 繰り上げ返済できる余裕がある人 | 安定を重視する人 | 固定期間中に繰り上げ返済予定の人 |
返済期間の考え方
返済期間は最長35年で組み、余裕があるときに繰り上げ返済するのが定石です。返済期間を短くすると月々の負担が増え、家計の柔軟性が低下します。
- 3,000万円・金利1.5%の場合:25年返済 → 月12.0万円 / 35年返済 → 月9.2万円
- 差額の月2.8万円を貯蓄・繰り上げ返済に回すほうが、リスク管理上は合理的
ペルソナ別:予算の考え方
20代で初めてのマイホーム(年収350〜450万円)
年収400万円の場合、安全な借入額は2,000〜2,400万円。自己資金200万円を加えて総予算2,200〜2,600万円が現実的です。
ポイントは将来の収入アップを見込みすぎないこと。昇給があれば繰り上げ返済に回すくらいの余裕を持ちましょう。
30代共働き夫婦(世帯年収600〜800万円)
世帯年収700万円の場合、安全な借入額は3,500万円前後。ただし、子どもの教育費(1人あたり1,000〜2,000万円)を見据えた計画が必要です。
教育費のピーク(高校〜大学)と住宅ローンの返済が重なる時期をシミュレーションし、家計が破綻しないか確認しましょう。
子育て世代(子ども1〜2人)
子どもがいる家庭は、教育費の確保を最優先にした予算設定が重要です。
| 教育費の目安(1人あたり) | 金額 |
|---|---|
| 幼稚園〜高校(全て公立) | 約540万円 |
| 大学(国公立・自宅通い) | 約480万円 |
| 大学(私立・自宅通い) | 約690万円 |
| 合計(公立中心) | 約1,020万円 |
子ども2人なら教育費だけで約2,000万円。住宅ローンの返済と教育費の両立ができるか、ライフプラン表で確認することを強くおすすめします。
予算3,000万円で検討中の場合
予算3,000万円は注文住宅の全国平均に近い水準。年収600万円前後であれば無理なく実現可能です。
この予算帯では、工務店や中堅ハウスメーカーで自由設計が可能。延床面積30〜35坪の4LDKが建てられます。断熱性能と耐震性能を優先し、設備のグレードで調整するのが賢い予算の使い方です。
予算オーバーを防ぐ5つのルール
ルール1:「総額」で予算を組む
本体工事費だけでなく、付帯工事費・諸費用・予備費込みの「総額」で予算を設定することが最も重要です。本体工事費だけで予算いっぱいだと、確実にオーバーします。
ルール2:ボーナス返済は使わない
ボーナスは景気や会社の業績に左右されるため、ボーナス返済に頼る計画は危険です。ボーナスが出たら繰り上げ返済に回すくらいの余裕を持ちましょう。
ルール3:優先順位を事前に決める
「絶対に譲れないもの(A)」「できればほしいもの(B)」「なくてもいいもの(C)」の3段階で優先順位を付けておくと、予算オーバー時にスムーズに調整できます。
ルール4:変更費用の累計を記録する
打ち合わせ中の設計変更は、1回ごとに追加費用を確認し、累計額を「変更管理シート」で記録しましょう。予備費の範囲内に収まっているかを常にチェックします。
ルール5:ライフプラン表を作る
住宅ローンの返済期間(35年)にわたって、収入・支出・貯蓄の推移を表にまとめる「ライフプラン表」を作成しましょう。教育費のピーク、車の買い替え、老後資金の積立てなど、大きな出費のタイミングを把握できます。
この記事のまとめ
- 予算は「借りられる額」ではなく「手取り月収の25%以内で返せる額」で決める
- 安全な借入額は年収の5〜6倍。共働きの場合は片方の年収で計算するのが安全
- 総予算は「本体工事費68%+付帯工事費17%+諸費用7%+予備費8%」で配分
- 頭金は物件価格の10〜20%が理想。ゼロでもOKだが利息負担が増える
- 教育費(子ども1人あたり約1,000万円)との両立を考慮したライフプランが必須
- ボーナス返済は使わず、返済期間は35年で組んで繰り上げ返済で調整する
よくある質問
Q. 年収400万円で注文住宅を建てる場合の予算目安は?
A. 安全な借入額は2,000〜2,400万円。自己資金200〜300万円を加えて総予算2,200〜2,700万円が現実的です。ローコストハウスメーカーの規格住宅であれば、3LDK〜4LDKの家が建てられます。
Q. 住宅ローンの返済額は手取りの何%が目安ですか?
A. 手取り月収の25%以内が安全ラインです。30%を超えると生活に余裕がなくなり、予期せぬ出費に対応しにくくなります。教育費がかかる時期は20%以内に抑えるのが理想です。
Q. 頭金なしで注文住宅は建てられますか?
A. 建てられます。フルローンに対応する金融機関は多いです。ただし、頭金ゼロの場合は借入額が増え、総返済額(利息込み)が大幅に増加します。最低限、諸費用分(150〜300万円)は現金で用意することをおすすめします。
Q. 共働きの場合、世帯年収で予算を組んでもいいですか?
A. 世帯年収で計算することは可能ですが、片方が仕事を辞めても返済できる額で計画するのが安全です。産休・育休中の収入減少、子どもの成長に伴う働き方の変化なども考慮してください。
Q. 変動金利と固定金利、どちらを選ぶべきですか?
A. リスク許容度と返済計画次第です。繰り上げ返済の余力がある方は変動金利、安定した返済額を希望する方は固定金利がおすすめ。変動金利は金利上昇リスクがあるため、金利が1〜2%上がっても返済できるかをシミュレーションしておきましょう。
Q. ライフプラン表は誰に相談すればいいですか?
A. FP(ファイナンシャルプランナー)に相談するのが最も確実です。住宅展示場のFP相談は無料のケースが多いですが、住宅会社紐付きでない独立系FPのほうが中立的なアドバイスが期待できます。住宅相談サービスでも無料で予算シミュレーションを受けられます。












