頭金なし(フルローン)でも注文住宅は建てられます。住宅金融支援機構の調査では、自己資金の割合が10%未満の世帯は全体の約3割に上ります。
しかし、頭金なしにはリスクもあります。この記事では、頭金ゼロで家を建てるメリット・デメリット、自己資金の目安、頭金なしでも失敗しないための対策を解説します。
頭金なし(フルローン)の実態
頭金ゼロで建てる人の割合
住宅金融支援機構「2023年度フラット35利用者調査」によると、手持金(自己資金)の平均は注文住宅で約597万円。ただし中央値はこれより低く、自己資金10%未満の世帯は約3割を占めています。
つまり、頭金が少ない・ゼロの状態で家を建てる人は決して少数派ではありません。
フルローンに対応する金融機関
多くの金融機関がフルローン(物件価格の100%融資)に対応しています。一部の金融機関では、諸費用まで含めた100%超の融資(オーバーローン)にも対応。
| 金融機関タイプ | フルローン対応 | 諸費用ローン対応 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ネット銀行 | 多くが対応 | 対応あり | 事務手数料が借入額の2.2% |
| 都市銀行 | 対応 | 一部対応 | 保証料が別途必要 |
| 地方銀行 | 対応が多い | 一部対応 | 地域密着で柔軟な審査 |
| フラット35 | 物件価格の90%まで | 非対応 | 90%超は金利が上がる |
フラット35の注意点:フラット35は物件価格の90%までは通常金利ですが、90%超〜100%は金利が0.26%程度上乗せされます。3,000万円・35年返済の場合、0.26%の金利差で総返済額が約150万円増加します。
頭金なしのメリット・デメリット
メリット
- 今すぐ家が建てられる:頭金を貯める期間(3〜5年)を待たなくていい
- 家賃の流出を止められる:月10万円の家賃なら年間120万円の節約
- 低金利の恩恵を最大限受けられる:金利が上がる前に固定できる
- 手元資金を残せる:生活防衛資金や投資資金を確保できる
- 住宅ローン減税のメリットが大きい:借入額が多いほど控除額も大きい
デメリット
- 総返済額(利息)が増える:3,000万円で約643万円の利息増(頭金500万円との比較)
- 月々の返済額が高くなる:家計の余裕が減る
- オーバーローン状態になるリスク:物件の価値 < 借入残高になりやすい
- 審査が厳しくなる可能性:自己資金ゼロは返済能力への不安要素
- 金利優遇が受けられない場合がある:フラット35は90%超で金利上乗せ
頭金あり vs なしの総返済額比較
| 頭金なし | 頭金300万円 | 頭金500万円 | |
|---|---|---|---|
| 物件総額 | 3,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 借入額 | 3,000万円 | 2,700万円 | 2,500万円 |
| 月々返済額(35年・1.5%) | 9.2万円 | 8.3万円 | 7.7万円 |
| 35年間の総返済額 | 3,858万円 | 3,472万円 | 3,215万円 |
| 利息総額 | 858万円 | 772万円 | 715万円 |
| 頭金なしとの利息差 | — | −86万円 | −143万円 |
頭金500万円を入れると利息が143万円減少しますが、500万円を貯めるまでに支払う家賃(月10万円×4年=480万円)と比較すると、早く建てるほうが得なケースも多いです。
自己資金はいくら必要?最低ラインと理想額
最低限必要な現金
頭金ゼロでも、以下の費用は現金で用意する必要がある場合があります。
| 費目 | 金額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 手付金(土地購入時) | 50〜100万円 | 売買代金の5〜10%が一般的 |
| 契約時の印紙税 | 2〜6万円 | 契約金額により変動 |
| 地鎮祭費用 | 3〜5万円 | 省略可能 |
| 引越し費用 | 15〜30万円 | 現金払いが一般的 |
| 家具・家電購入費 | 30〜100万円 | 必要最低限の場合 |
| 合計(最低ライン) | 100〜240万円 |
自己資金の目安
- 最低ライン:100〜200万円(手付金+最低限の諸費用)
- 安心ライン:300〜500万円(諸費用+生活防衛資金)
- 理想:物件価格の10〜20%+生活防衛資金
絶対に手元に残すべき:生活費3〜6ヶ月分の生活防衛資金
生活防衛資金とは
万が一の収入減少(転職、病気、リストラ等)に備えて、最低3ヶ月分、理想は6ヶ月分の生活費を手元に残しておくべきです。
月の生活費が30万円の家庭なら、90〜180万円の生活防衛資金が必要。これを崩してまで頭金に回すのは危険です。
頭金なしで失敗しないための5つの対策
対策1:月々の返済額を手取りの25%以内に収める
フルローンの場合、借入額が大きくなる分、月々の返済額の管理がより重要になります。手取り月収の25%以内を厳守し、できれば20%以内を目指しましょう。
対策2:変動金利のリスクを理解しておく
フルローンで変動金利を選ぶ場合、金利が1〜2%上がっても返済できるかを事前にシミュレーションしましょう。
| 金利 | 月々返済額(3,000万円・35年) | 現在からの増額 |
|---|---|---|
| 0.5%(現行水準) | 7.8万円 | — |
| 1.0% | 8.5万円 | +0.7万円 |
| 1.5% | 9.2万円 | +1.4万円 |
| 2.0% | 9.9万円 | +2.1万円 |
| 3.0% | 11.6万円 | +3.8万円 |
対策3:繰り上げ返済を計画に組み込む
頭金なしで建てた後、毎年50〜100万円の繰り上げ返済を行うことで、利息負担を大幅に削減できます。
- 3,000万円・35年・金利1.5%で毎年100万円の繰り上げ返済 → 返済期間が約15年短縮
- 利息削減効果:約350万円
対策4:住宅ローン減税を最大限活用する
住宅ローン減税は、年末の借入残高の0.7%が所得税・住民税から控除される制度です。借入額が大きいフルローンのほうが、控除額のメリットは大きくなります。
2024年入居の場合の最大控除額は13年間で最大273万円(認定住宅の場合)。実質的に、頭金なしのデメリット(利息増加)をかなり相殺できます。
対策5:コストパフォーマンスの良い建築会社を選ぶ
フルローンだからこそ、建築費を抑えて借入額を減らすことが重要です。
- 規格住宅:完全自由設計より10〜20%安い
- 地域密着の工務店:大手ハウスメーカーより10〜20%安い
- シンプルな総2階建て:複雑な形状より100〜300万円安い
ペルソナ別:頭金なしのリスクと対策
20代で貯金が少ない場合
20代は返済期間を35年取れるメリットが最大の武器です。頭金なしでも月々の返済額を抑えやすく、将来の昇給による繰り上げ返済も期待できます。
ただし、車のローンやクレジットカードのリボ払いがある場合は、住宅ローンの審査に影響します。まずはこれらの借入を完済しましょう。
30代共働き夫婦の場合
共働きで世帯年収は高いが、子どもの出産・育児で一時的に収入が減る可能性。フルローンで借りる場合、片方の収入だけで返済できる額に抑えることが安全策です。
子育て中で教育費もかかる場合
頭金を捻出するために教育費の積立てを減らすのは本末転倒。教育費の確保を優先し、頭金なしで家を建てるのも合理的な判断です。ただし、住宅ローンの返済額は手取りの20%以内に抑えましょう。
自己資金ゼロ(貯金がほぼない場合)
貯金がほぼゼロの状態で家を建てるのは非常にリスクが高いです。最低でも以下を準備してから検討しましょう。
- 生活防衛資金:生活費3ヶ月分(90〜120万円)
- 引越し・家具費用:50万円
- 合計150〜170万円は最低限確保
この記事のまとめ
- 頭金なし(フルローン)でも注文住宅は建てられる。自己資金10%未満の世帯は約3割
- フルローンのメリットは「早く建てて家賃を止められる」「住宅ローン減税の恩恵が大きい」
- デメリットは「利息総額が増える」「オーバーローン状態のリスク」
- 最低限必要な現金は100〜200万円(手付金+引越し費用+生活防衛資金)
- 月々の返済額は手取りの25%以内を厳守。20%以内が理想
- 繰り上げ返済を計画的に行えば、頭金なしのデメリットを大幅に軽減できる
よくある質問
Q. 頭金なしだと住宅ローンの審査に通りにくいですか?
A. 頭金がないこと自体で審査に落ちることはほとんどありません。審査で重視されるのは年収、勤続年数、他の借入状況、信用情報です。ただし、自己資金ゼロだと「計画性がない」と見なされる金融機関もあるため、複数の金融機関に相談しましょう。
Q. 諸費用もローンに含められますか?
A. 金融機関によっては可能です。ネット銀行や一部の都市銀行では、登記費用や火災保険料を住宅ローンに含められるプランがあります。ただし、借入額が増える=利息も増えるため、できれば諸費用は現金で支払うのが望ましいです。
Q. 頭金を貯めてから建てるべきですか?
A. 現在の家賃と頭金の利息削減効果を比較して判断しましょう。月10万円の家賃を払いながら3年かけて300万円貯めると、家賃で360万円が消えます。頭金300万円の利息削減効果(約86万円)と比べると、早く建てるほうが得なケースが多いです。
Q. 住宅ローン減税は頭金なしのほうが得ですか?
A. 控除額だけを見れば、借入額が大きいほうが得です。ただし、住宅ローン減税の控除率は0.7%で、ローンの金利が1%以上の場合は「利息支払い > 税額控除」になります。減税だけを理由にフルローンを選ぶのはおすすめしません。
Q. 貯金100万円で注文住宅は建てられますか?
A. 非常に厳しいですが不可能ではありません。ただし、引越し費用や当面の生活費を考えると余裕がなさすぎます。最低でも150〜200万円は手元に確保したうえで検討してください。まずは住宅相談サービスで予算シミュレーションを受けることをおすすめします。
Q. 親からの援助は頭金に使えますか?
A. 使えます。さらに、住宅取得等資金の贈与税非課税制度を利用すれば、一定額まで贈与税がかかりません(2024年の場合、省エネ住宅で最大1,000万円)。親からの援助がある場合は積極的に活用しましょう。












