近年、平屋の注文住宅を選ぶ人が急増しています。国土交通省の調査では、平屋の着工棟数が2015年の約3.5万棟から2024年には約6.1万棟と10年で約1.8倍に増加。
「階段のない暮らし」「家族のつながり」「老後も安心」——平屋の魅力はたくさんありますが、広い土地が必要・坪単価が高い・防犯面の不安など見落とせないデメリットもあります。
この記事では、平屋のメリット9つ・デメリット9つを2階建てとの比較を交えて徹底解説。後悔しない判断ができるよう、あなたの家庭に合った選び方もお伝えします。
平屋と2階建ての基本比較
| 平屋 | 2階建て | |
|---|---|---|
| 必要な土地面積(30坪の家) | 40〜50坪 | 25〜35坪 |
| 坪単価の目安 | 60〜90万円 | 50〜80万円 |
| 30坪の建築費目安 | 1,800〜2,700万円 | 1,500〜2,400万円 |
| 構造の安定性 | 高い(低重心) | 普通 |
| バリアフリー対応 | 容易(段差なし) | 階段あり |
| 日当たり | 周囲の建物に影響を受けやすい | 2階は日当たり確保しやすい |
| プライバシー | 外からの視線が気になりやすい | 2階は視線が気にならない |
| メンテナンス | 足場なしでできる範囲が広い | 2階以上は足場が必要 |
平屋のメリット9選
メリット1:バリアフリーで階段の事故リスクがゼロ
平屋の最大のメリットは階段がないこと。消費者庁の調査では、住宅内での転倒・転落事故の多くが階段で発生しています。小さな子どもや高齢者がいる家庭では、階段のない平屋は安全面で圧倒的に優れています。
将来的に車椅子が必要になった場合も、平屋ならワンフロアで生活が完結するため安心です。
メリット2:生活動線がシンプルで効率的
洗濯物を2階のベランダまで運ぶ、寝室から1階のトイレまで階段を降りる——平屋ならすべてがワンフロアで完結。家事の効率が格段に上がります。
メリット3:家族のコミュニケーションが増える
ワンフロアに家族全員がいるため、自然と顔を合わせる機会が増えます。リビングを中心とした間取りにすれば、子どもの様子を見守りながら家事ができ、「子どもが何をしているかわからない」という不安が減ります。
メリット4:耐震性が高い
平屋は重心が低く、構造的に安定しています。2階建てと比べて上部からの荷重がないため、地震の揺れの影響を受けにくいのが特徴。大きな開口部(窓)を設けやすいのも平屋ならではです。
耐震性の違い
同じ耐震等級3でも、平屋と2階建てでは平屋のほうが構造的に有利。2階建ての場合は2階の重さが1階にかかるため、大きな地震時に揺れが増幅されやすいですが、平屋にはそのリスクがありません。
メリット5:開放感のある空間設計ができる
2階がない分、天井を高くしたり勾配天井にしたりできます。高天井に大きな窓や天窓を設ければ、光があふれる開放的な空間が実現。梁を見せるデザインやロフトの設置も可能です。
メリット6:メンテナンスが楽で費用を抑えやすい
2階建ての外壁塗装は高所での足場設置が必要ですが、平屋なら足場のコストが低い、または不要。屋根や雨樋の点検も容易で、トラブルを早期発見しやすいメリットがあります。
メリット7:庭とのつながりが楽しめる
平屋はすべての部屋が地面に近いため、ウッドデッキやテラスとの一体感を演出しやすいです。リビングからフラットにつながるウッドデッキは、室内と屋外の境界をなくし開放感を生みます。
メリット8:光熱費を抑えやすい
ワンフロアで空気の流れが効率的なため、冷暖房の効率が良いのが特徴。2階建てのように「1階は暖かいのに2階は寒い」という温度差が生じにくく、全館空調も導入しやすいです。
メリット9:老後も安心して住み続けられる
「今は元気だけど、将来が心配」——平屋なら30年後も同じ家で快適に暮らせます。2階建ての場合、年齢とともに2階を使わなくなり、実質的に半分しか活用できなくなるケースも少なくありません。
平屋のデメリット9選
デメリット1:広い土地が必要
30坪の延床面積を確保する場合、2階建てなら25〜35坪の土地で済みますが、平屋は40〜50坪の土地が必要。都市部では土地代が数百万〜1,000万円以上高くなる可能性があります。
デメリット2:坪単価が高い
同じ延床面積の場合、平屋は屋根と基礎の面積が2階建ての約2倍になるため、坪単価が10〜20%高くなります。
| 部位 | 平屋(30坪) | 2階建て(30坪) |
|---|---|---|
| 基礎面積 | 30坪分 | 15坪分 |
| 屋根面積 | 30坪分 | 15坪分 |
| 外壁面積 | 少ない | 多い |
| 坪単価への影響 | 基礎・屋根コストが増加 | 外壁コストが増加 |
デメリット3:日当たりが悪くなりやすい
すべての部屋が1階にあるため、周囲に2階建て以上の建物があると日陰になりやすいです。特に北側の部屋は日当たりが確保しにくく、中央に位置する部屋も暗くなりがち。
対策として、中庭(コの字型・ロの字型)や天窓を活用して光を取り込む設計が有効です。
デメリット4:プライバシーの確保が難しい
すべての窓が1階にあるため、道路や隣家からの視線が気になりやすいです。特にリビングの大開口窓は開放感がある反面、外から丸見えになるリスクも。
デメリット5:防犯面の不安
すべての窓が1階にある平屋は、空き巣に狙われやすいという指摘があります。寝室や浴室の窓も1階になるため、防犯対策が特に重要です。
平屋の防犯対策
- 防犯ガラス・二重ロックの窓を採用
- 人感センサー付きの外灯を設置
- シャッターや面格子を取り付け
- ホームセキュリティの導入
- 見通しの良い外構設計(死角をつくらない)
デメリット6:水害リスクが高い
2階建てなら2階に避難できますが、平屋には垂直避難ができないというリスクがあります。ハザードマップで浸水リスクがあるエリアでは、基礎を高くする(高基礎)やロフトを設けるなどの対策が必要です。
デメリット7:家族のプライバシーが確保しにくい
ワンフロアに全員がいるメリットの裏返しで、音が伝わりやすく、個室の独立性が低いという面があります。思春期の子どもがいる場合、「自分だけの空間が欲しい」と感じることも。
デメリット8:固定資産税が高くなりやすい
同じ延床面積でも、平屋は広い土地が必要なため土地の固定資産税が高くなる傾向。また、基礎・屋根面積が大きい分、建物の評価額も高くなりやすいです。
デメリット9:部屋数の確保が難しい
限られた土地面積の中ですべてを1階に収めるため、部屋数を増やすと1部屋あたりの面積が狭くなるジレンマがあります。4LDK以上を希望する場合は50坪以上の土地が必要になることも。
ペルソナ別:平屋が向いている人・向いていない人
子育て世帯の場合
小さな子どもがいる家庭では、階段の転落リスクがない平屋は安全面で大きなメリット。リビングから子どもの様子を見守りやすく、家事をしながらの育児もしやすいです。ただし、子どもが成長して個室を必要とする時期を見据え、部屋数の計画は慎重に。
共働き夫婦の場合
家事動線がシンプルな平屋は、忙しい共働き世帯の時短に貢献。洗濯→干す→しまうがワンフロアで完結するのは大きなメリットです。
30代で注文住宅を検討中の方
30代なら「今の暮らし」と「老後の暮らし」の両方を見据えた選択が可能。平屋を選べば、老後にバリアフリーリフォームが不要。長期的にはコストメリットがあります。
予算3,000万円以内で建てたい方
坪単価が高い平屋を予算内に収めるには、コンパクトな間取り(25〜28坪)がポイント。地方なら土地+建物で3,000万円以内も十分可能ですが、都市部では土地代だけで予算を圧迫する可能性があります。
土地を持っている方
すでに40坪以上の土地をお持ちなら、平屋が有力な選択肢。土地代の問題がないため、建物に予算を集中できます。
地方で建てる場合
地方は土地が広く安いため、平屋との相性が抜群。50〜60坪の土地が500〜800万円で手に入るエリアも多く、ゆとりある平屋ライフを実現しやすいです。
都市部で建てる場合
都市部は土地が狭く高いため、平屋は不利。30坪の家を建てるのに必要な40〜50坪の土地を都市部で確保するのは予算的にハードルが高い。都市部なら2階建てや3階建てが現実的です。
平屋のデメリットを解消する間取りの工夫
デメリットをカバーする設計テクニック
- 日当たり対策:中庭(コの字型・ロの字型)で光を取り込む / 天窓を設置
- プライバシー対策:目隠しフェンス+植栽 / 窓の位置を高く設計
- 防犯対策:防犯ガラス+人感センサーライト / シャッター設置
- 水害対策:高基礎(GL+50cm以上)/ ロフトの設置
- 部屋数対策:可動間仕切りで将来の部屋分割に対応 / 小屋裏収納の活用
- プライバシー(家族間):居室エリアとリビングエリアを離して配置
この記事のまとめ
- 平屋の着工棟数は10年で約1.8倍に増加。人気急上昇中
- 最大のメリットはバリアフリー・家族のつながり・耐震性・メンテナンスのしやすさ
- 最大のデメリットは広い土地が必要・坪単価が高い・防犯面の不安・水害リスク
- 同じ30坪の場合、平屋は2階建てより建築費が10〜20%高く、土地も広く必要
- 地方や広い土地を持っている人は平屋が向いている
- 都市部や予算が限られている人は2階建てが現実的
- デメリットは中庭・天窓・高基礎・防犯設備などの設計で解消可能
よくある質問
Q. 平屋と2階建て、同じ延床面積ならどちらが安いですか?
A. 建物だけなら2階建てのほうが安い傾向です。平屋は基礎と屋根の面積が大きいため坪単価が10〜20%高くなります。ただし、メンテナンス費用は平屋のほうが安くなるため、30年のトータルコストで見ると差は縮まります。
Q. 平屋に必要な土地の広さはどれくらいですか?
A. 延床面積30坪の平屋を建てる場合、建ぺい率を考慮して40〜50坪の土地が目安です。庭や駐車スペースを確保するなら50〜60坪あると理想的です。
Q. 平屋は地震に強いですか?
A. 構造的に2階建てより有利です。重心が低く上部からの荷重がないため、地震時の揺れの影響を受けにくい特徴があります。ただし、耐震等級は建物の設計によるため、必ず「耐震等級3」を確認しましょう。
Q. 平屋の固定資産税は2階建てより高いですか?
A. 土地が広い分、土地の固定資産税は高くなる傾向があります。建物については、基礎や屋根面積が大きい平屋は評価額が高くなりやすいですが、差額は年間数万円程度のケースが多いです。
Q. 子育て世帯に平屋はおすすめですか?
A. 小さな子どもがいる家庭には非常におすすめです。階段の転落リスクがなく、家事をしながら子どもを見守れるメリットは大きい。ただし、子どもが成長したときの個室確保を見据えた間取り計画が重要です。
Q. 平屋でも4LDKは可能ですか?
A. 可能ですが、35坪以上の延床面積が必要です。土地は50〜60坪が目安。限られた面積で部屋数を確保するには、廊下を最小限にする・LDKを中心にした回遊動線にするなどの工夫が重要です。













