断熱等級は、注文住宅の快適性・光熱費・健康に直結する重要な指標です。2022年に等級5〜7が新設され、2025年には等級4が義務化されたことで「どこまで上げるべきか」と悩む方が増えています。
この記事では、断熱等級4〜7の違いをわかりやすく解説し、費用・快適性・補助金の観点から最適な断熱等級の選び方をご紹介します。
断熱等級とは?基本をわかりやすく解説
断熱等級(断熱等性能等級)とは、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)で定められた、住宅の断熱性能を示す等級です。等級1〜7の7段階あり、数字が大きいほど断熱性能が高いことを意味します。
断熱性能を測る指標「UA値」とは
断熱等級はUA値(外皮平均熱貫流率)を基準に決まります。UA値とは、住宅の外皮(壁・屋根・窓・床)から逃げる熱量を表す数値で、数値が小さいほど断熱性能が高いことを意味します。
UA値の目安:UA値0.87以下が等級4、0.60以下が等級5、0.46以下が等級6、0.26以下が等級7です(6地域・東京などの基準)。
2025年の義務化と今後の見通し
2025年4月から、すべての新築住宅で断熱等級4以上が義務化されました。さらに2030年には等級5以上が義務化される予定です。つまり、これから家を建てる方にとって等級4は最低ラインであり、将来の基準も見据えた選択が求められます。
断熱等級4・5・6・7の違いを比較
各等級の特徴・UA値基準・コスト差を一覧で比較します。
| 項目 | 等級4 | 等級5 | 等級6 | 等級7 |
|---|---|---|---|---|
| UA値基準 (6地域) | 0.87以下 | 0.60以下 | 0.46以下 | 0.26以下 |
| 対応基準 | 省エネ基準 | ZEH基準 | HEAT20 G2相当 | HEAT20 G3相当 |
| 追加費用の目安 (等級4比) | 基準 | 約10〜50万円 | 約100〜200万円 | 約250〜400万円 |
| 冬の体感 | 暖房なしでは寒い | それなりに暖かい | 暖房控えめで快適 | 無暖房でもかなり暖かい |
| 光熱費削減 (等級4比) | 基準 | 約15〜20%減 | 約25〜35%減 | 約35〜45%減 |
| 義務化時期 | 2025年〜 | 2030年〜(予定) | 義務化なし | 義務化なし |
等級4:2025年からの最低基準
1999年に定められた次世代省エネ基準に相当する等級です。2025年から義務化された最低ラインであり、これから建てるなら等級4では物足りないというのが業界の共通認識です。
等級5:ZEH基準に相当
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の断熱基準に相当します。等級4からの追加費用は比較的少なく、コストパフォーマンスに優れた選択肢です。2030年に義務化が予定されているため、これから建てるなら最低でも等級5を目指すべきです。
等級6:HEAT20 G2相当(おすすめ)
多くの住宅の専門家が推奨するのが等級6です。HEAT20のG2グレードに相当し、冬場でも室温が13℃を下回らないレベルの断熱性能があります。光熱費の削減効果も大きく、長期的に見ると等級4や5との差額を光熱費の節約で回収できる可能性があります。
等級6がおすすめの理由
- 健康面:ヒートショックリスクを大幅に低減
- 費用対効果:追加費用100〜200万円を光熱費の削減で回収可能
- 快適性:冬の室温が安定し、暖房に頼りすぎない生活が可能
- 資産価値:将来の基準強化にも対応でき、住宅の資産価値が維持されやすい
等級7:最高等級(HEAT20 G3相当)
現在の最高等級です。北海道基準の住宅並みの断熱性能があり、年間を通じて少ないエネルギーで快適に暮らせます。ただし追加費用が250〜400万円と大きく、寒冷地やこだわりの強い方向けです。
断熱等級を上げるメリット
快適な室温が年間を通じて保たれる
断熱性能が高い家は、外気温の影響を受けにくく、夏は涼しく、冬は暖かい室内環境を実現できます。部屋ごとの温度差も小さくなり、家全体が快適になります。
光熱費を大幅に節約できる
断熱性能が高いほど冷暖房の効率が良くなり、電気代・ガス代の削減につながります。等級6の住宅は等級4と比べて年間3〜5万円の光熱費削減が期待でき、30年間で90〜150万円のコスト差になります。
ヒートショックのリスクを低減する
冬場に暖かい部屋から寒い脱衣所・浴室へ移動する際の急激な温度差は、ヒートショックの原因になります。消費者庁の報告によると、入浴中の溺死者数は年間約5,000人にのぼり、交通事故死者数を上回ります。高断熱住宅は家全体の温度差を小さくし、このリスクを減らします。
補助金・税制優遇が受けられる
高い断熱等級の住宅は、さまざまな補助金・優遇制度の対象になります。
| 制度 | 概要 | 条件 |
|---|---|---|
| ZEH補助金 | 55〜140万円/戸 | 等級5以上(ZEH基準) |
| こどもエコすまい支援事業 | 最大100万円/戸 | ZEH基準以上 |
| フラット35S | 金利引き下げ(当初5年間-0.5%) | 等級5以上 |
| 住宅ローン控除 | 借入限度額の上乗せ | ZEH水準以上 |
これらの補助金・優遇を活用すれば、断熱等級を上げるための追加費用をかなりカバーできます。注文住宅の総額と坪単価の記事も参考にしてください。
断熱等級を上げるデメリット・注意点
建築費用が高くなる
高性能断熱材や高性能窓の採用、施工手間の増加により、建築費が上がります。予算の立て方で全体のバランスを考えながら判断しましょう。
換気計画が重要になる
高断熱住宅は気密性も高くなるため、適切な換気計画がないと室内の空気が滞り、結露やカビの原因になります。第一種換気システム(熱交換型)の導入を検討しましょう。
施工品質が断熱性能を左右する
どんなに高性能な断熱材を使っても、施工に隙間があると断熱性能は大幅に低下します。断熱・気密施工の実績が豊富な建築会社を選ぶことが重要です。ハウスメーカーと工務店の違いを理解したうえで、断熱施工に強い会社を選びましょう。
結局どこまで必要?断熱等級の選び方ガイド
断熱等級の選び方は、予算・地域・ライフスタイルで変わります。以下を参考に、ご自身に最適な等級を選んでください。
| こんな方 | おすすめ等級 | 理由 |
|---|---|---|
| 予算を最小限に抑えたい | 等級5 | 2030年の義務化基準。最低限の快適性を確保 |
| 快適性と費用対効果のバランス重視 | 等級6(最も推奨) | 光熱費削減で追加費用を回収可能。健康メリット大 |
| 寒冷地に建てる | 等級6〜7 | 冬の厳しさを考慮すると高い断熱性能が必要 |
| とにかく快適さを追求したい | 等級7 | 最高の断熱性能。年間を通じて安定した室温 |
費用対効果の目安:SUUMOの専門家インタビューによると、築27年を超えるとHEAT20 G2(等級6相当)が建築費+光熱費のトータルコストで最も安くなるという試算があります。30年以上住む前提なら、等級6は「元が取れる投資」です。
断熱等級を上げると光熱費はどれくらい安くなる?
断熱等級を上げると初期費用は増えますが、毎月の光熱費削減で回収できます。断熱等級別の年間冷暖房費の目安を見てみましょう(延床面積35坪、東京都で試算)。
| 断熱等級 | 年間冷暖房費の目安 | 等級4との差額 | 追加建築費の回収年数 |
|---|---|---|---|
| 等級4(義務基準) | 約15〜18万円 | — | — |
| 等級5(ZEH基準) | 約10〜13万円 | 年間約5万円節約 | 約6〜10年 |
| 等級6(HEAT20 G2相当) | 約7〜10万円 | 年間約8万円節約 | 約8〜13年 |
| 等級7(HEAT20 G3相当) | 約5〜7万円 | 年間約10万円節約 | 約12〜18年 |
等級5(ZEH基準)なら追加コスト30〜50万円で年間約5万円の光熱費削減が見込めるため、6〜10年で元が取れる計算です。住宅の寿命を考えれば、断熱性能への投資は長期的に見て確実にプラスになります。
断熱等級と健康の関係
断熱性能は光熱費だけでなく、住む人の健康にも大きく影響します。近年の研究では、室内温度が低い住宅に住む人ほど、以下のリスクが高まることが報告されています。
- ヒートショック:冬場の脱衣所・浴室の温度差による血圧変動。年間約1.9万人が浴室内で亡くなっている
- 呼吸器疾患:結露によるカビ・ダニの増加がアレルギーや喘息の原因に
- 循環器系疾患:室温が低い住宅では高血圧のリスクが上昇
断熱等級5以上であれば、冬場でも室内の温度差を3〜5℃以内に抑えられるため、ヒートショックのリスクを大幅に軽減できます。
コスパで選ぶなら等級5〜6がおすすめ:等級7は最高性能ですが、追加コストが大きく回収に時間がかかります。多くの方にとっては等級5(ZEH基準)か等級6(HEAT20 G2)がコストと快適性のバランスが最も良い選択です。寒冷地(北海道・東北)では等級6以上を強くおすすめします。
よくある質問
Q. 断熱等級4の家は寒いですか?
A. 断熱等級4は2025年の義務化基準ですが、冬場は暖房なしだと室温が10℃以下になる地域もあります。現在の水準では物足りなく、最低でも等級5以上を目指すのがおすすめです。
Q. 断熱等級を上げるとどれくらい費用が増えますか?
A. 等級4から等級5へは約10〜50万円、等級6へは約100〜200万円、等級7へは約250〜400万円が追加費用の目安です。建物の規模や使用する断熱材によって異なります。
Q. HEAT20とは何ですか?
A. HEAT20は「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」が定めた断熱基準で、G1・G2・G3の3段階があります。等級5がG1相当、等級6がG2相当、等級7がG3相当にほぼ対応します。
Q. ZEH住宅には断熱等級いくつが必要?
A. ZEH住宅の認定には断熱等級5以上(UA値0.60以下、6地域の場合)が必要です。さらに太陽光発電などでエネルギー消費量を正味ゼロにすることが条件です。
Q. 断熱等級は後からリフォームで上げられますか?
A. 窓の断熱改修や内断熱の追加で等級を上げることは可能ですが、新築時に施工するより費用が2〜3倍かかる場合があります。可能であれば新築時に高い等級を選ぶほうが経済的です。
Q. 断熱等級と気密性能の関係は?
A. 断熱性能と気密性能はセットで考える必要があります。いくら断熱等級が高くても、隙間が多い家では暖気や冷気が漏れてしまいます。C値(相当隙間面積)1.0以下を目安に、気密性能にもこだわりましょう。
Q. 地域によって必要な断熱等級は違いますか?
A. はい。日本は1〜8の地域区分に分けられ、寒冷地ほど厳しいUA値基準が設定されています。北海道(1地域)では等級6でもUA値0.28以下が求められ、東京(6地域)の等級7並みの基準です。
この記事のまとめ
- 2025年に等級4が義務化、2030年には等級5が義務化予定
- これから建てるなら等級5が最低ライン、等級6が最もおすすめ
- 等級6は費用対効果が高く、30年住むなら光熱費削減で追加費用を回収可能
- 高断熱住宅は快適性・健康(ヒートショック防止)・光熱費に大きなメリット
- 施工品質が断熱性能を左右するため、実績のある建築会社選びが重要







